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一人、また一人と招待状により呼び出された者達が島へ次々に辿り着く。 その中に一際ありえない程のゴツい鉄槌を肩に担いだ男もいた。 乗り込んできた艇から桟橋へ降り、今新たな一歩を――
ミシッ―ベキベキ…バギンッ――!!
「―――うぉァ?!」
どっぽーん。 ぶくぶくぶく。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「あァ初っ端からコレかよ、ウゼェ…」
結局海底から浜まで歩いて渡ってきたらしく、焚火に当たりながらハンマーの上に座り服を乾かしている。 上半身裸で。 流石に下は脱がない、この男でも。
?「兄さん、何て格好してるの…というか何をしてるの」
「あ? おう、やっと着いたか」
そんな事をしていると男の後ろへ少女が顔を少し背けながら遅れてやってきた。 どうやら次の便が来ていたらしい。
男―― 式村 醍(しきむら だい)。 元教師というウソくさい経歴を持つどう見ても肉体派な奴。 有耶無耶の内に職が無くなった後は実家のある街へ戻り、昼に夜にブッ壊しまくりのドカタ生活をしていたり。 招待状の文面に元職場と似た空気を感じ、決意を胸にこの島へ。
少女― 式村 圭(しきむら けい)。 醍の妹。 兄が勤務していた学園に転入生として在学していたが、色々あり転校前の学校へ戻り卒業。 現在はボランティアをしたり実家の道場の手伝いをしたりする気まま生活中。 準備が出来次第現地集合、と兄に呼び出されてこの島へ。
圭「それにしても、急に呼び出してどうしたの? 家に帰ってからも殆ど帰ってなかったのは良いんだけど、今度はこんな果ての島に…」
醍「どうしたも何も、続きに決まってンだろ。 大方の予想通りこの島ァあの学園とよく似た空気持ってやがったしな」
圭「あ、やっぱり…暫く出て来ても大丈夫な様に家の用意しといたから良いんだけど」
この兄のしそうな事、大方は目星はつけていた様だ。
圭「でも兄さんいいの? 紗夜さんのこと」
醍「う…そりゃ心配かって言やァ心配だけどよ」
紗夜―― 美作 紗夜(みまさか さや)。 12年前醍が入院していた際に知り合った同い年の少女(当時)。 退院後互いの連絡先を全く知らなかった為途絶していたが、街へ帰った際に偶然再会。 色々あって恋人関係になりましたとさ。
醍「ケドまァ大丈夫だろ、俺もアイツもな」
圭「うわ、羨ましいくらいに熱々だぁ…」
滅多に見ない兄の表情に、思わず圭はくすくす微笑んでしまった。
醍「お前だって人の事言えねェんじゃねえか?」
圭「な?! な、何のことかな…」
醍「(ニヤニヤ」
圭「…私だって好きな人に会えないのは寂しいですっ …もうっ。」
色恋話でカウンターされるとは思わなかった。 しかも黙っていた彼の事をまさか知っているとは… 意外と侮れない兄。 ああ、自分でも顔が少し赤くなってるのが分かる――圭は少し兄を恨んだ。
そんな兄妹の後ろに少年の人影が一つ、思い出す様に醍の方を注視している。 その視線に気付き醍が振り返り、互いの顔を見――……
??「…うぇ、やっぱアンタかよ」
醍「あァ? ……お前、美作駿斗(すると)か? 何でこんなトコにいるんだよ、オイ」
圭「え? 何この展開? えーと、知り合い?」
醍「元生徒」
圭「その生徒さんが何でまたこんな所に…?」
駿斗「わかんねぇかな、まあ何から言ったらいいんでしょうね」
醍「グダグダ言われても困るから手短に言えばいいぞ」
駿斗「んじゃ手短に。 ドウモ紗夜、姉がお世話になってまス」
無表情のまま本当に手短に答える少年。 その返答に、
醍「……………は?」
思わず呆けた声を出してしまう醍であった。
暫しの間言葉を交わした後、少年は「準備をしに戻る」と言い離れていった。 残されるは再び兄と妹。
圭「珍しい名字なのに気付いてなかったんだね」
醍「おう、つーか名字一緒ってコトすらすっかり忘れてたぞ。 さっき口に出してアレ?ってよ」
圭「兄さん、うっかりは程々にね大事な所なんだから。 あ、と…そうだ。 先に食料品とか買ってくるから兄さんは荷物番お願いね、さっき良いの見掛けたんだ」
溜息混じりに呟いた後、仕方ないなぁという顔をしながら圭はさくさくと市場らしき方へ掛けていった。 最後に残ったのはアニキ一人。 流石に暇だ。 この島での行動は最大3人、圭は除くとして残り1人をどうするか… しかし番を頼まれた以上此処から動く訳にもいかない。 さて、どうするアイ○ル。
醍「肩慣らしでもしておくか」
考えても無駄、そのうち適当に何とかなるだろう、と開き直ることにした。 ぽつりとそう呟くと今まで座っていたハンマーの柄を握り、ゆっくりと持ち上げる。 肩口まで振り上げると重量が脚へ集中し若干大地に跡を残す。 振り上げては下ろす。 振り上げては下ろす。 ただただこの基本的な動作を落とさない様繰り返す。 その重量ゆえか単調だがかなりの体力を必要とし、結構な準備運動になる。 っていうか汗だく。
醍「コレぐれぇ軽く扱える様にはなっておきてェモンだよなァ…!」
段々と自分が限界へと追い込まれていく感覚、それに抗う事で更に強くまた更に。 醍は没頭し、ひたすら振り続けていt――
「――ヒサシブリ」
ゴシャアァン…!
目の前に突如ホログラムCGの少年が浮かび上がり、驚きの余りハンマーを止め損ね盛大に落っことした。 危ねぇアブねぇ…と安堵の声を出す醍。 だが同時に「この少年」の素性と存在を多少なりとも知っている事から、一つの事を考えていた。
醍「(…案外3人揃ったかもな)」