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歩行石壁「ひどいよ!ひどいよぉッ!」
喋って走って飛んできた歩行石壁は何やら嘆きの言葉を上げつつ盛大に崩れていった。 確かに"ただの壁"じゃァ無かったが、やっぱ"壁"以外の何者でも無かったワケで。
醍「何より壁はブッ壊すのが昔からの礼儀だろ?」
圭「や、壁は乗り越える物だよ…?」
日本語としての見解と、ドカタとしての見解と。 教師に戻る気ホントにあるのだろうか、コイツ。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
キル「ダイ。 丁度いいコミュニティ、あったぞ。」
醍「・・・お?」
キル「お前が入ってた、以前の部活。 部長?また募集してる。 幼女趣味のダイにも、丁度いい、かも?」
醍「あン? …どれだよ、っつーか幼女趣味なんかねェぞ俺」
5日目の朝、半ばぼうっとしている最中キルリアから突拍子も無い爆弾が投下された。 何回言っても情報修正しないこいつはホントどうしたら良いんだろうか。 一瞬"このまま誤情報のまま放っておきゃ害のある奴寄って来ねぇか?"と思わなくも無かったが 色々な意味でメンドクセェ事になるのが目に見えてるっつーか
事態悪化以外の何者でも無いからもう全力否定するしか無ぇよコレ。
そんな思考をよそにキルリアがホログラムでコミュニティのデータを出力する。
[ Comunity Number 113 ... コミュ参加者がもの凄い勢いで脱衣 ]
よりによってソレか。
駿斗「……あぁ、寧ろ裸族というより露出狂ロリコンじゃなくてペドフィリアか」
キル「ペドフィリア」
駿斗「良いんじゃねェですか?お似合いですぜ」
キル「実際、エレニアにも”露出狂”いわれてた、し、ね?」
醍「別に見せて恥ずかしいモンじゃねェってのもあったし、後はノリ次第だったんだがなア。 ……ペドじゃねェよ」
誤解の声を受け付けない2人が揃って物凄い勢いで絶望しそうな言葉を吐き掛ける。 その上駿斗は観察メモを上書きしてるオマケつき。 新手のイヤガラセかこれは。 連日連夜こうも同じ様な事ばかりされた反動か口調が少し荒れていた、恐らく表情も似た様な状態だろう。
醍「とりあえず今は入る気とかねえよ、そんな気分じゃねえ。 ついでに俺の性癖は至ってフツー寄りだ、フツー」
駿斗「例の幼女からアンタだけ呼び捨てされてましたが。 随分と親しげですねェ」
脳裏によく見かける青い髪の少女の姿が思い浮かぶ。 …幼女じゃねえよな、年齢的には。 ……つーかそれは俺の所為なのか?
醍「単に呼びやすいってだけじゃねえか? 圭は女同士ってのもあるだろうし」
駿斗「圭さんはきちんとさん付けされてます。アンタだけ呼び捨てにされてんですよ。」
醍「ヒエラルキー下ってか上に見られてないってだけだろ、呼び捨てぐれぇで何ガッついてんだ」
駿斗「信用できネェからです。アンタの周りには女だらけだ。」
醍「俺が女のケツ追っかけ回してばっかだッツーなら言われて当然だが、そうじゃあねェだろ」
ほぼ恒例と化している2人の無限ループ口喧嘩が始まった。 「飽きないのか」の前に「よく言葉が続くな」といった勢いの怒涛の口喧嘩、 そりゃもう部外者の人にはあんまり聞かれたくない内容っていうかワケ分からない内容ではあるが。
キル「少し、声、抑えたほう、良いぞ」
キルリアが何かを感知したのか警告を軽く出すも、当の2人はお互いに知ったこっちゃ無ェ状態。
醍「疑惑事態がテメェの思い込みなんだがな、まだ分かンねェか。 オマエにシスコン疑惑って方がよっぽど信憑性ありそうだぞ」
駿斗「――貴様にだけは言われたくは無いわ!」
ガッ
反論を言った直後、駿斗が声を張り上げ掴み掛かってきた。 体格差もあり大した影響は無いが、それでも駿斗は掴み掛かったまま睨み上げてくる。
その姿に何故か昔の自分が重なる。 酷く ――苛々する。
醍「ヒトの事好き勝手言っておきながら、いざテメェが言われりゃ力で黙らせようとする…か。 ――だからお前はガキなんだよッ!」
キル「ダイ、スルト。 ココで大声、危険。 来るぞ、毒虫とか、沢山?」
もう、止まらない。 大声が堰を切って出て、拳が駿斗の胸倉を掴む。 それでも言い争いは止まらない。
キル「――ケイ、これ、止まる?」
圭「…無理だよ、今の兄さん本気で怒りそうな気持ちを必死に抑えてる顔してる」
キルのシステム的な問い掛けと圭の困惑した答えが小さく聞こえる。 だが、そんな事は最早どうでもいい。
「実力行使、でも無理そう……? 毒針、投擲。」
――待て、今なんつった?
意識をそちらに向けた瞬間キルリアの毒蠍が毒針を射出していた。
とすっ。
十数分後、掴み合いは拳飛び交う殴り合いへ発展していた。 毒とかもうマジでアウトオブ眼中の二人。
駿斗「それが開き直りってんですよ! あんたは違う違う喚いて終わりだから信用なんねぇんだよ。 紗夜の事想ってる様子も全然伝わってこねえ。 そんなんに紗夜は渡さねぇ! 持ち上げて叩き落されりゃ余計に痛てぇだろが。 どんだけアイツが苦しむ事になると思ってやがる」
醍「じゃあお前がシスコンじゃねえ事証明しろ、っつったら 何するよ?」
駿斗「相手が納得するまで時間かけて説得するね! 少なくとも絶叫でかきまわしゃしねぇわ」
醍「その相手が色眼鏡全開で聞く耳すら持たねぇなら?」 会えねェ事に毎日毎日メソメソメソメソしてウサギみてぇに野垂れ死んでる方が伝わるか? お好みか? テメェの我侭も大概にしとけよ」
口喧嘩しながらも互いの手は止まる事無く繰り出され続ける。 片や速度と精度を伴った拳、片や重量を伴った拳。 互いの拳がギリギリの所で避け避けられ掠り掠られ弾き弾かれ。 こう拮抗状態が続くのであれば、残る要素は純粋な体力のみ。
駿斗の息が次第に切れ始め、俺は未だ疲れを感じない。 こんな勝負で勝っても、相手を黙らせても、意味が無い上に何の解決にもなりゃしねェ。 ……だが、それでも今この勝負だけは退けない理由がある。
醍「それに何だ、俺が紗夜を捨てることが前提みてえな事口走ってンじゃねえ ……幾らテメェでも口走っていいセリフじゃねェよ…!!」
駿斗「兎は寂しくても死なねぇよ。寧ろあいつ等はしぶとさ、繁殖のシンボルだッツーの 極端すぎんだよバカ教師!」
ドムッ…!
続け様に何かを叫ぼうとした駿斗の胸部を、重い拳が捉えた。 そのまま打ち出す様に振り抜き砂地へ叩きつけられる。 何とか起き上がろうとするも咳が止まらないらしく仰向けに倒れたままだ。
話にもなりゃしねェ、と互いの平行線な意思の状態を面倒臭さ満点に含んだ愚痴を吐き 俺は駿斗に背を向けた。
醍「あン? どうしたよ、大声出し過ぎて喉でも痛めたのか」
何分経っただろうか。 背後にいる人物は喉を押さえたまま突っ伏したまま殆ど動いた気配がしなかった。 幾ら向こうが近接戦闘が不得手だとはいえ…流石にこれは何かがおかしい。
駿斗「……トドメ」
何かを言い掛けて再び咳き込みながら、駿斗が胸に爪を立てて起き上がってくる。 顔色は悪く、その姿にいつも程の生気は見られなかった。
醍「…阿呆かオマエは、トドメなんか刺さなきゃならねぇ理由がどっかに転がってる様にでも見えたのか?」
駿斗「意見があわねぇから命がけで拳で語ろうってんじゃねぇんで?」
何を言おうとしていたのか理解するのに多少時間が掛かったが、 理解すると同時に溜息が思わず出た。 駿斗の目は相変わらず虚ろなまま、余り頭が回っているとは思えない。 反応を聞き再び、一際大きな溜息が出される。
醍「それこそ暴行魔の一行加えるだけだろ。 重要なのは『納得』なんだよ、どんな結果だろうと納得出来りゃどうってことねえ」
こんな方法でどちらが勝ちかなど決めた所で意味が無い…どころか納得も出来ない。 どちらも納得出来ないのであれば、これから先何度も何度も繰り返されるだけだ。 ンなモン、メンドクセェ以外の何者でもありゃしねえ。
――それよりも、何よりも。
醍「…それと、ガキが命を賭けるとかヌかすな。 生きてやる覚悟もねェのかお前はよ」
駿斗「うっせぇ……」
まだ何か言い足りないらしく駿斗がこちらを見やる。 その瞳には先程よりは生気が戻ってきていた。 こっちはとりあえず良し、か。
醍「とりあえず喋ンな、後で幾らでも聞いてやるよ。 生憎俺は生き抜くつもりしかねえ。 それに…向こうもお出ましな様子だしな、少しでも休めておけ、死ぬ気もねェんだろ?」
流石にキルリアの警告を無視し過ぎたか、振り返ればすぐそばまで敵の群れは迫っていた。 甲殻を持った蚯蚓が1、2、3匹、そしてそれらに守られる様に毒百足が1匹。 少しばかりコイツは厄いが…
まあテメェのツケぐらいテメェでどうにかしねェと、な。
駿斗の状態が回復するのを脇に見て、金槌を握り締め一歩敵前へ踏み出した。
圭「守りたいものは同じなんだろうに、ね…」 一部始終を見ていた少女は少し寂しそうな目をして、小さく呟いた。