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(とぅるるるるるん)
彩「?」
まだ海水浴の時間帯。 潜ったのはいいがいつまでも上がってこないフェティを置いといて、 涼をとりに行った小屋で他の参加者と初めての交流をしたり まさかのマウンテンかき氷地獄を味わったり。 そんな事を体験し元いた岩場へ戻っていたその時、 この島に来てからは一度も鳴った事が無かった携帯端末が着信音を鳴らし始めた。
彩「…もしもし?」
一体誰なんだろう、そんな事を考えつつ電話を取ってみると…
醍『おう、まだ繋がったか! いやァ助かったぜ、ハハハッ!!』
なんだ、醍にーさんか。
醍『……話聞く前に切ろうとすンじゃねェっての』
ぴたり、とこっそり動いていた指が止まる。 バレてた。
彩「で、どうしたの。 醍にーさんから掛けてくるなんて」
醍『さっき言い忘れてた事があったの思い出してな。 多分赤い髪した馬鹿が引っ付いてると思うんだが、それの知り合いがそっちに着くんだそうだ』
彩「へえ…っていうかよく分かったね、いるの」
醍『予想に難しくねェだろああいうのは。 ンで、ついでにお前宛の小荷物持ってかせたから見つけて受け取るように』
彩「ちょΣ」
醍『目印は赤い服着たあからさまに怪しい眼帯男、 他にもいるかもしれねェケドそれが一番目立つ。 ンじゃ頑張れよー』
彩「え、そんな一方てk」
(プツッ つー つー つー…)
…相変わらず押しの強い、思わず軽く溜息が出る。 『赤い服』を着た『眼帯』の『男』、それだけの情報を元にどうやって探せというのだろうか。 元々冒険者として上陸している人の中にも同じ特徴の人がいるかもしれない、 もしいたら人間違いじゃないか。 『あからさまに怪しい』という箇所だけで考えても、この島にはそれこそ一杯いる気がする。
彩「…どうすればいいんだろ」
岩場に腰掛け脚を海水に浸しながら、彩は若干途方に暮れ始めた。 その脚を目印にしてか、水面下からこぽこぽと泡が立ち影が近付き……
フェティ「 ぷはーっ!! ……んー? どしたのサイ、浮かない顔なんかしちゃってさ」
なんぞ戻ってきた。 もしかして今まで潜っていたのだろうか… というのは聞かない事にしておこう。
彩「いや醍にーさんから『赤い服着たあからさまに怪しい眼帯男を捜せ』って さっき連絡が来てさ、フェティの知り合いらしいんだけど」
フェティ「あー、それって多分―――」
パキィン…
心当たりがあるのだろうか、答えを言おうとしたその時 何処かから小さく弾ける様な音が聞こえ発言を遮った。
辺りを見回すと、つい先程まで誰もいなかったハズの少し離れた所に人影が二つ。 黒い衣服を纏ったやや小柄な女性と、赤い神父服を着た……
ああ、この人か。
確かにあからさま過ぎて分かり易い… 今度は思わず脱力の溜息をついてしまった。
第十日目 『赤服のトナカイ サンタ 夢・ブレイクアウター』
フェティ「どしたのハルおじさん、こんな所まで来るなんて」
ハル「遅まきながら新婚旅行、とでも言っておきましょうかね。 実際の所は研究も行動も何も思いつかなくて暇を持て余しただけですが」
そんな事を二・三、フェティと話をしてその奇妙な二人は再び去っていった。 小荷物というには少し大きいだろうと思われる荷箱を置いて。
フェティ「危険物じゃないと思うし、とりあえず開けるしかないんじゃないかな」
彩「…しか、ないよねやっぱり」
(ぱかっ)
開けると、そこには何故か浴衣が入っていた。 それも見覚えのある彩自身の浴衣だった。 …どうやら届け物とはこれの事らしい。
"時期的にそっちでも何かあるかもしれないから送っておくぞ"
添付してあった紙にはそう書いてあった。 夜着ていく衣装に悩んでいた所だ、実にナイスタイミング。
彩「…ん?」
よく見ると、紙の下の方に何か書き加えられている。 …読めない、日本語でプリーズ。
フェティ「何々ー? んー… "着られそうな衣服をいくつか加えて入れておきます。 黒亜。" だってさー」
浴衣を引っ張り出すと、確かにその下には幾つかの衣類が入っていた。 何にしても、いざという時用にこれは助かるかもしれない。
日も沈み、海岸を宵闇と星明りが包む。
ボシュッ―――
空へと昇る炎。
どーーーーーん
弾ける光。
赤。
青。
黄。
夜空に降る極彩色の雨。
咲く空花、散る火花。
フェティは気付いたら何処かへ行っていた。 志井もフェティの頭の上に乗っていたので恐らくは一緒のはず。 …変な物買って食べてないと良いんだけど、ね。
彩「たーまやー」
何にしても久し振りの一人の夜だ、少しくらい満喫していても罰は当たらないだろう。 欲を言えば隣に誰か、とか思わなくも無かったが……
彩「…そうだ、さっき貰った林檎飴食べておこ」
私ってそんな柄だったっけ、とか思ったので考えるのをやめた。
何か面白いこと起きるといいな。 そんな、些細な願いだけをとりあえず胸に秘めつつ。