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《1》 眼の前には暗く煌く星の如き謎のプラズマ的なモノがいる。 それを前にして、溜息一つ。
醍「つくづくこの島の生態系が分かんねェ…」
圭「まあでも今更でもある訳だし」
醍「それもそうだな、ってそういやァ赤いのは何処行ったんだ?」
圭「何でも "やる事が出来た、晩御飯には戻る" ってさ」
醍「アレもアレでワケ分かンねェな…まぁいい。
よォしッ、最後だ! 気合入れて行くぞおらァッ!!」
一際気迫の篭った咆哮が響き渡る。
《2》 フェ「あ、やっぱり来てたんだねーハルおじさん」
遺跡の中をあっち行ったりこっち行ったり右に曲がったり左に転がったり。 人の気配が無い方無い方へと進み開けた広間の様な場所へ至ると、 そこには以前醍にちょっかいを出していた赤い神父が佇んでいた。 フェティの顔を見るとその男、ハルシオンは懐かしむ様に少し顔付きを崩す。
ハル「貴女に逢うとは予定外でしたが、随分と大きくなりましたね」
フェ「まあ10年位振りだからね、少しは育ってなきゃっ」
ハル「それはまたお久し振りな訳ですね。 シェオルは…お父さんは元気にしてましたか?」
フェ「あー それが…遭難した後に見付けられて話をしてから一回も家帰ってないんだー」
ハル「これは 酷い」
フェ「そういうおじさんだって色んな所で噂になってんじゃんさー。 短期間にあっちこっちで目撃とか異世界にも出現とか、怪奇新聞みたいだったよ。
…どんな手品なのかな?」
挨拶、雑談、取り止めもない会話。 そんな中でも赤い少女は、何気ない事柄からも情報を探ろうとしていた。 何というか、必死。 その様子を見てハルシオンは軽く目を伏せ溜息をつき、 ゴソゴソと懐から歪んだ光の波を見せる小さな珠玉を取り出す。
ハル「私はこれを使う事で事象を操作したり、『世界』を超える事も可能になりました。 殆ど解析出来ていませんが簡単に例えると…データ操作、でしょうかね。 まあ大体の規格外の遺物を利用すれば出来る程度の事なのですが」
実物を見せながら授業をする様にハルは説明を返し、 そこまで言い切るとほぼ同時に、フェティを見て再び軽く溜息をつく。
ハル「しかし、貴方はその生身一つで本来の『世界』を突破して此処へ至っています。 一体どういう状況か、私にはさっぱりですよ」
フェ「簡単だよ。 それでも、逢いたい人がいる ―――それだけっ」
赤い瞳の二人が見合う。
ハル「随分良い目をする様になりましたね、それも真っ直ぐに純粋に。 それだけの力があれば私達と来る事も出来ましょうに…答えは聞くまでも無く分かりますがね」
フェ「うん、多分ハルおじさんが考えてるそのまんま。 私は世界なんかいらないよ。
欲しいものはたった一つだけだから。 それだけでいいんだ」
身を低くして構えるフェティ。 手を横へ翳し空間から鈍い鉄色の十字架を引き出すハルシオン。
ハル「ではせめてもの、という事で久し振りに少し遊んで行きますか? 戦友の一人娘とやるとは微塵にも思っていませんでしたけれど」
フェ「ん、おっけーい。 それじゃ、全力で行くよっ!」
踏み込む音、刹那に肉薄し飛び込む鋼の拳。 それを容易く弾く別の鉄、歪な機械音と共に爆ぜ現れる砲身。 そのアギトから奏でられる銃弾の咆哮、一つ、二つ、三つ。 身を反らし一つ、逆しまに返り捻り二つ、弧を描く様に地を滑らせ加速し飛び退き三つ回避。
再び見合う赤と赤の瞳。 宴はまだ、終わらない。
《3》 満身創痍で遺跡から野営地へ戻るや否や、人も動物も皆倒れ伏し、 次に気が付いてみれば朝日が昇る焼けゆく空が広がっていた。
醍「よォ、お前はこれからどうすンだ?」
フェ「そうだね、手掛かりも全然無いからなー… とりあえずはこの島で少しでも手掛かり無いか探してみるよ、 一緒に行動出来そうな気の合う人待ちながらさ。 幸いこの島は時間の流れがかなーりゆっくりっぽい気がするし、ね」
圭「そっかぁ…それじゃ、ここでお別れだね」
フェ「あっははっ、何悲しそうな顔してるのさ。 それに、そういう時は 『またね』 って言うモンだよ?」
醍「珍しくマトモな事言うじゃねえか」
フェ「いやぁそれほどでもー♪」
醍「誉めてねェよ」
醍「さッてと…そろそろ船の時間だな」
フェ「あれ、もうそんな時間なんだ」
圭「ん、もう行かないとだね」
醍「ンじゃあよ――」
圭「それじゃあ――」
醍&圭「「 ま た な ( ま た ね ) 」」
《番外・4》 醍「…っても直帰は出来ねェんだよなぁ、二週間もどうしろってンだ。 俺は適当に帰り道で寄り道してくけど、お前はどうするよ?」
圭「うー…わ、私も今すぐ帰るのは、ちょっと…。 あんな事しちゃったし……もう少し時間無いと顔合わせられない(ぼそり)」
醍「あン? まァいい、んじゃ適当に付き合え」
圭「ん」
醍「……つーか、気になる事が一つあるんだが」
圭「え?」
醍「ウチのジジィ、道場で干乾びてねぇだろうな。 流石に一月分近くの準備はしてなかったろお前」
圭「あー…うん、大丈夫、とは思う。 多分。 きっと、恐らく…」