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紗夜に電話を掛けるか掛けないか。 普段なら特に問題も無いのだが、 以前チョコを渡しに来た帰り際送れなかったのが少し自分の心に尾を引いている。 どうもあの時から調子が悪くなっている気がする、ってか確実に。 この辺で腹ァ括らねえと、な。
プルルルル… プルルルル… ガチャ 紗夜「・・・はぁい?みまさかです」 12コール目で紗夜が出た、何処と無く声に元気が無い気がする。 醍「よ、俺だ。 元気にしてるか?」 紗夜「・・・うん。元気だよ」 やはり元気が無い。 声にハリも無ければいつもの様な飛び付くかの如きテンションも無い、 何より間が重い。 醍「(ふう、と少し溜息) 無理してウソ言うな、声でバレバレだぞ。 ・・・何かあったのか?」 紗夜「あったよ。でももうなにもないよ」 醍「・・・あン? もうない、ってどういう事だそれ、平気なのか?」 紗夜「知らない人からお手紙がきたんだよ」 紗夜「島のニュース新聞が入ってて、醍先生のことが書いてあったよ」 …あ、ヤな予感。 紗夜「醍センセイは教え子に手を出して赤ちゃんができたんだって書いてあったよ」 醍「はあ?!」 うわあい予感的中ー… っていうかホントにゴシップ記事送りやがったかあいつ。 殺(シャー)。 紗夜「あの日醍センセイが何か考え事で忙しくて 私が何て言っても気が付いてくれなかったのもそれでだったのかなと思ったよ。 島にはかわいいこもきれいなひともいっぱいだもん。 醍センセイかっこいいもん。他の人と約束したくなってもおかしくないよ」 醍「いや待て落ち着け俺… つーか誰が書いたかもわかんねぇ新聞をあっさり信じるなよ… 俺はそこまで信用出来ないか?」 俺がかっこいいか如何かはこの際スルーしておく。 醍「確かに綺麗なのも可愛いのもカッコイイのもいるな、そこは否定しねえ。 だが…こー言うのも結構問題発言かもしれねえけど、俺にはそういう意味じゃ興味ねえんだわ。 仲間や友人としてなら兎も角な」 嘘は言っていないし、本心だし。 真っ直ぐと見る様な口調で諭すように紗夜へ返答をしていく。 紗夜「信じてるよ。でも帰ってから醍センセイのこと思い出すとチクチクして。 それでニュース新聞にそんな事書いてあったから、 醍センセイが途中から私が居ないみたいに考え事してたのもそれでだったのかなと思ったよ」 醍「…わりぃ、あの時は色々と片付けなきゃなんねえ問題があってな、けど言い訳はしねえ。 俺が悪かった。 でもこれだけは覚えといて欲しいんだ、他の誰にでもなく、紗夜だけには覚えておいて欲しい。 俺は約束は守る」 紗夜「うん、醍センセイは約束守ってくれたよ。 またねっていって、時間はかかったけどちゃんと私の近くに戻ってきてくれたもん。 小さい時の約束も醍センセイ、ちゃんと覚えててくれた。守ってくれてるよ」 互いに独白が続いている。 紗夜「サイちゃんも同じ事言ってたよ」 醍「サイ?」 紗夜「サイちゃんっていってたよ。泣いてたら、きてくれたんだよ。 ニュース新聞は間違ってて,醍センセイはそんな事してないって教えてくれたよ」 醍「いってた、って事は紗夜も知らない奴って事か…? つーか不法侵入とかじゃねえのかそれ …まあ、それはどうでもいいか」 紗夜「チクチクがズキズキになって泣いてたら、パソコンつけて教えてくれたよ。 家の中に入ってきたんじゃなくて、パソコンから文字と声で教えてくれたよ。 醍センセイとすーちゃんが冒険したりケンカしたりしてるとこも見せてくれたよ」 醍「パソコン? って、ケンカしてる所見せてンのかよ…っ!!」 いや、まさかな…などと考えていたらトンデモな事を言い出す紗夜。 映像で見せれるって言ったら「アイツ」しかいねーよ「アイツ」しか、まさかってレベルじゃねえ。 紗夜「うん。パソコンだよ。パソコンから小さい子の声がして、サイちゃんだって言ったよ? 醍センセイとスーちゃんと一緒にいるんだって」 ホイ確定。 まあ、今度何かの時に礼くらい言っておくべきか。 そんな事を一人ごちていると再び声を掛けられる。 紗夜「醍センセイ」 醍「とりあえず説明はしてくれた、ってワケだな…オッケー。 …ん、どうした?」 紗夜「それから、醍センセイがどうしてるかも見せてくれるって言ってたよ。 ん。 やっぱり醍センセイが近くに居ないと寂しいよ。 危なくても醍センセイの近くが良いよ」 醍「そう思ってくれンのは嬉しいが、それでもやっぱ駄目だ。 俺がこっちにいるのはケジメっつーか何つーか…俺のワガママだからな。 あぁそうだ、電話しといて忘れる所だったぜ危ねぇあぶねぇ… チョコ旨かったぞ、アリガトな。 ホワイトデーは物で渡せない代わりに声のプレゼントって事で一つ先送りにさせてくれ」 紗「・・・」 醍「・・・?」 紗夜「醍センセイと皆がちゃんと無事に帰ってきてくれたら何もいらないんだよ。 できれば醍センセイにいてほしいけどそれも無理ならがまんするよ。 近くに居たくてもいけないなら、しょうがないんだよ」 電話口の向こうから迷っているような息遣いで、気落ちした声が聞こえる。 寂しいのか自信が無いのか…そのどちらでもないか、両方か。 分からないが、俺は俺の気持ちを伝えてあいつを喜ばせられる様にするだけだ。 今はそれに集中しよう。 醍「その代わり、出来るだけ俺も早く帰れる様に頑張ってみる、だから安心しろ。 俺の隣は紗夜以外嫌だからな?」 向こう側から小さく「はうっ」って声が。 紗夜「わたしの旦那様は醍センセイだけって13年前から決めてるんだよ? でも醍センセイがそう言ってくれても、醍センセイがわたしだけの王子様だって主張して、 取られないように一緒にいたい年頃なんだよ。 醍センセイ。わたしが圭ちゃんみたいに強い女の子だったら、ついて行けた?」 言葉に少しもにゃもにゃした感じの抑揚が戻っている、よし、照れてる。 醍「強かったらそれはそれで置いていくぞ、それこそ心配する必要が無いじゃねえか。 強くないからこうして不安になっちまうんだろ」 紗夜に言う様でいて、自分にも言い聞かせている様で。 紗夜「むぅ……見送ったのはわたしなんだよ。それはわかってるんだよ。 でも醍センセイ、わたしと一緒に居るの、嫌い?」 醍「嫌いな訳ねェだろ何言ってンだ、デコピンするぞデコピン」 紗夜「だって醍センセイ、どうしても私のこと置いてくみたいに言うんだもん。 一緒に居るのがダメはさみしいんだよ?」 醍「一緒にいる事自体は悪くねえ、けど場所が都合ワリィんだ。 そっちなら兎も角…此処じゃお前をしっかり守れるだけの自信がねェ、 …まだまだ駄目なんだよ俺自身が」 紗夜の望みはごく正当な物だと俺も思っている。 だがそれを支えるだけの、通しきるだけの力が俺には無い。 だからこそ今はまだ甘える事は出来ない。 紗夜「醍センセイ・・・」 醍「…すまねえ、もうちょいワガママ通させてくれ」 紗夜「……うん。醍センセイ、待ってる。 約束なんだよ。 あ。すーちゃんに電話しなきゃいけなかったんだよ…… あう……まだ話してたいけど、醍センセイ、電話してくれてありがとう。またね」 醍「…もう平気そうだな、おう、また電話出来そうな時になったら電話してやるよ、楽しみに待ってな?」 紗夜「うん。もう大丈夫なんだよ。心配かけてごめんなさい。 えとね、醍センセイ、大好きなんだよv おやすみなさい、お帰りをお待ちしてるよ」 どうやら持ち直した様だ、心の不安が一気に晴れていく。 相槌をして気持ちの良い状態のまま通話状態を切――― プツッ ツー ツー ツー… 小さな少女らしき声が途切れ際に割り込む。 明らかに紗夜のものとは違う声。 聞こえた瞬間に走る悪寒。 ……何だこれは。 十数秒後、再び端末が受信を告げる。 が、その内容はまた後日に。 1116文字くらい削れって言われたら次の部分丸ごとなんですよ奥さん。 長過ぎてネタ入れる所じゃ無いよーないよー!?