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目の前にはギギギ…と五月蝿い偽妖精が2匹、 それとでっぷりつーかバカみてぇな規格外体格してる大鳩が1匹。
醍「…メンドクセェなぁ」
式村醍はやる気なさそうだ!(実力発揮50%)
醍「達筆だったな…」
圭「達筆だったね…」
先程騒いで文字を書いて緊急事態を知らせてきた歩行雑草。 その字がえらく達筆だった事に二人は衝撃を隠せていなかった。
醍「色々言いてェ事もあるだろうが…まずは自分の調子を戻す事に専念しとけ、余裕がねェなら尚更な。 元気になりゃ付き合ってやるさ、幾らでもよ」
辛くも蚯蚓どもを撃退した一行はバテバテな身体を引き摺って何とか休める所を見つけ転がっていた。 戦闘後や大乱戦の合間に奔走していた圭も今は少し離れた所でぐっすり就寝中、 キルは疲労に縁が無いのか何か別の作業しに姿を消している。
ぶっちゃけ俺自身も疲れが溜まってきたのかあんまり動きたくねえ位。 向かい合わせに座っている駿斗も相当参っているのか、物言いたそうな視線だけが此方に向いている。 そうまでして何か言いたい事があるとしても、先ずは自分の状態を戻さなきゃ喧嘩も出来やしねえぞ、と。
駿斗「アンタに何度も言った筈です。行動を見直せと。 聴く耳を持たない、というより、言葉と行動が一致してネェんです。」
このセリフも何度目だったか、また始まった。 言われ続けるつーからにはこっちにもそう見えるトコあるって事なんだろうが…サッパリだから困ったモンだ。 そんな微妙な顔をしていると駿斗は落ち着いた口調で言葉を続ける。
駿斗「じゃ、こうしましょう。紗夜がアンタの知らない男達に囲まれて、話す。 『初めまして』とか『見覚えある』とか声を掛けられた相手を凝視して、名前を呼び合う。 婚約者が居るのに、そんな事おくびにもださず男にばかり声をかけ、 声を掛けられて、ニコニコ上機嫌。 ……いい気分します?」
また妙なコトを聞いてくるヤツだな、その場合俺は…
醍「ぱっと見はそりゃ何だありゃ、って思うケドよ。 聞いてみてその答えが大したことねえモンなら、紗夜を信じるさ。 信じてやらなきゃ何が出来る」
真面目な顔して答えることにしてみた。 …何でそこで落胆するんだよお前は。 変な事言ったか、俺?
駿斗「それは紗夜が自分の恋人、婚約者ってフィルターがあるからそういう判断が出来るンですよ……」
醍「?」
鈍い奴め…、そんな事を言いたげな目だった。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
駿斗「――ッツー訳で俺は過保護なシスコンですよ。 アンタは自分が否定されてばっかで辛いでしょうが、分かってもらえますかね?」
醍「お前の話は分かった、十分な」
駿斗「んじゃ、そっちも主張があればドウゾ。」
一時間程だろうか、話はお互いの事情や別角度からの見方などに発展していた。 まぁお互いつっても俺や圭の事情は然程量無かったワケなんだが。 一通り説明が終わり駿斗が話の主導権を俺に渡してくる…ってもあんま言う事残ってねえよなぁ。
醍「…どうこう主張する気もねえケドよ、1つだけとりあえず納得した所はある。 お前に認められる様になるには、死んでも死なねェ位に自分を鍛えなきゃならねえ、 それが第一条件 …ってな」
物足りなさそうな表情が返ってくる、今度は言いたい事の察しが付いたが。
駿斗「あと、浮気や不倫とかはやめてくだせぇよ。 アンタが墓穴堀過ぎな体質なのは分かりましたが、 だからってその体質をカモフラージュにして他の女に手ェ出したりしたら……
快楽任せの置き土産分、きっちり責任とってもらいますぜ」
醍「少なくとも俺には紗夜以外ありえねえよ、あいつを裏切るツモリなんざ毛頭ねェ。 泣き顔はもう沢山だ」
以前見た紗夜の泣き顔が脳裏に浮かぶ、それだけで少し苦しくなる。 もう見たくない、泣かせたくない、それは偽り無く本音。 どうやらその事だけは少なくとも伝わったようだ。
駿斗「あっちゃ困りますよ。 てか、俺まだ叔父さんなんて呼ばれたかねぇのに……なんて事してくれやがったんですか」
醍「世の中にゃ現役小中学生で叔父さん叔母さん言われる奴だっているらしいぜ、そこん所は諦めてくれや。 それもまた、俺らの結果だ」
少し気が晴れたのかそんな談笑が交わされる。
駿斗「……帰ってくる頃には父親かも知れねえってのに何悠長な事を。」
何の冗談だソレは。
醍「……そこまで手ェ出してねえぞ、マジで。」
駿斗「【寝かせて貰えない程暑苦しい事】ってえのは、どんな事ですか義兄サン?」
いやホントだからな? 本当だっつーの?! 信じて無ェだろその顔、絶対信じてねェなオイ!? …OK、落ち着け俺とりあえず説明だけしておくか。
醍「何って布団の中で撫でたり抱きしめたりキスしたりってのを延々と」
駿斗「上着脱ぐ必要はどこにあったんで?」
醍「暑いだろ、やっぱ」
駿斗「服着てろよ。」
何このセメントなカウンター。 呆けていると、頭をガシガシ掻きながらセリフは続けられた。
駿斗「もうガキができててもおかしかねえな……このバカ教師!」 イタリア人に生まれてたらマンマミヤ~~~!とか叫んでるな、俺」
醍「深読みすんな! 出来てるワケねえから安心しろこのバカ義弟! せめてオーマイガッ!とかジーザス!くらいにしとけよ、あぁ…似た様なモンか。」
駿斗「上着脱いで覆いかぶさるとか、 ナニしたのか分かったもんじゃネェでしょうに。 もうね、疑わしすぎるんです、墓穴掘りすぎなんです!だからあんだけ……」 俺がどんだけ心配して恐れてきたかあんたに想像できますか? ヒヤヒヤして寝た気がしネェ毎日でしたよ」
あァ、何だそんな事心配してやがったのかコイツは。 何か納得出来た。
醍「そりゃ確かに冷や汗モンだなア ……いや笑い事じゃねえんだろうけどな」
駿斗「……このバカップルどもは」
今度は頭を抱えだす駿斗、こいつも大概に面白ぇリアクションするよなァ。 いやそういう事じゃねえよな今は。
駿斗「まぁ、帰る頃に同じセリフが言える様なら、 どうぞ所帯でもガキでも何でも作っちまえよもう」
醍「おう、いつでも何度でも言ってやらァ。 お前も自分のやりたい事の1つや2つここで見つけられるくらいの余裕は持たせてやりてぇ所だしな」
駿斗「挨拶がいつで諸手続きがいつで挙式がいつで…… ってやってる内にアンタらデキてそうで怖えぇンですよ …… まぁ、もういいですけどね、えぇもう、好きにして 俺は紗夜似の姪が出来れば満足ですから」
醍「また随分な投げっぷりだな、甥になっても知らねェぞ?」 駿斗「父親に似るんでしょうかね……」
醍「似るかもしれねぇし、あいつの顔で暴れまわってるかもしれねえぞー」
言ってから気付いたが、それって正しく目の前にいるコイツだよな。
圭「さてと、ここからはちょっと番外編」
醍「大乱戦のネタだな、再更新しまくりの3回分は全部一回戦負けだったが確定結果では…」
圭「ちょっと驚き…組合せの運もあったんだろうけれどまさかベスト8まで残るとは、ね」
醍「もう運気全部使い果たしたンじゃねェか?」
圭「兄さんが言うと縁起でもないから」
圭「まあでも驚いたのはやっぱり一回戦、かな?」
醍「そりゃそうだろ、つーかアレは無ェよ」
醍「 ト ム じ ゃ ね え か ? ! 」
圭「兄さん、近くにいるみたいだから大声は危ないよ」
醍「まァ優勝者が背後の知り合いってのも微妙に驚いたがな」
圭「余り大きな差が出ない時期だから一点能力に秀でるか、召喚系があるかどうか… そういう所で左右されるケースが多い、かなぁ」
醍「短期に全体攻撃を修得出来たかどうかってのも多少ありそうだな、一撃で潰してラクにするのも通じ難い。 魔力を殆ど成長出来てない前衛系もいただろうし、ちと魔法に分があった印象かねェ」
圭「その辺りを踏まえて色々頑張るのがこれから、だね」
醍「まぁ、だからといって魔法要素・素質ゼロな設定の俺が魔力鍛えるワケねえンだが」
圭「背後さんも妙な制限とか茨道ばかり突っ込まなくても…はあ(溜息)」
・背後思考能力低下期間突入中につき文章が変なのは仕様です。 再更新はありません。 確定です。
歩行石壁「ひどいよ!ひどいよぉッ!」
喋って走って飛んできた歩行石壁は何やら嘆きの言葉を上げつつ盛大に崩れていった。 確かに"ただの壁"じゃァ無かったが、やっぱ"壁"以外の何者でも無かったワケで。
醍「何より壁はブッ壊すのが昔からの礼儀だろ?」
圭「や、壁は乗り越える物だよ…?」
日本語としての見解と、ドカタとしての見解と。 教師に戻る気ホントにあるのだろうか、コイツ。
キル「ダイ。 丁度いいコミュニティ、あったぞ。」
醍「・・・お?」
キル「お前が入ってた、以前の部活。 部長?また募集してる。 幼女趣味のダイにも、丁度いい、かも?」
醍「あン? …どれだよ、っつーか幼女趣味なんかねェぞ俺」
5日目の朝、半ばぼうっとしている最中キルリアから突拍子も無い爆弾が投下された。 何回言っても情報修正しないこいつはホントどうしたら良いんだろうか。 一瞬"このまま誤情報のまま放っておきゃ害のある奴寄って来ねぇか?"と思わなくも無かったが 色々な意味でメンドクセェ事になるのが目に見えてるっつーか
事態悪化以外の何者でも無いからもう全力否定するしか無ぇよコレ。
そんな思考をよそにキルリアがホログラムでコミュニティのデータを出力する。
[ Comunity Number 113 ... コミュ参加者がもの凄い勢いで脱衣 ]
よりによってソレか。
駿斗「……あぁ、寧ろ裸族というより露出狂ロリコンじゃなくてペドフィリアか」
キル「ペドフィリア」
駿斗「良いんじゃねェですか?お似合いですぜ」
キル「実際、エレニアにも”露出狂”いわれてた、し、ね?」
醍「別に見せて恥ずかしいモンじゃねェってのもあったし、後はノリ次第だったんだがなア。 ……ペドじゃねェよ」
誤解の声を受け付けない2人が揃って物凄い勢いで絶望しそうな言葉を吐き掛ける。 その上駿斗は観察メモを上書きしてるオマケつき。 新手のイヤガラセかこれは。 連日連夜こうも同じ様な事ばかりされた反動か口調が少し荒れていた、恐らく表情も似た様な状態だろう。
醍「とりあえず今は入る気とかねえよ、そんな気分じゃねえ。 ついでに俺の性癖は至ってフツー寄りだ、フツー」
駿斗「例の幼女からアンタだけ呼び捨てされてましたが。 随分と親しげですねェ」
脳裏によく見かける青い髪の少女の姿が思い浮かぶ。 …幼女じゃねえよな、年齢的には。 ……つーかそれは俺の所為なのか?
醍「単に呼びやすいってだけじゃねえか? 圭は女同士ってのもあるだろうし」
駿斗「圭さんはきちんとさん付けされてます。アンタだけ呼び捨てにされてんですよ。」
醍「ヒエラルキー下ってか上に見られてないってだけだろ、呼び捨てぐれぇで何ガッついてんだ」
駿斗「信用できネェからです。アンタの周りには女だらけだ。」
醍「俺が女のケツ追っかけ回してばっかだッツーなら言われて当然だが、そうじゃあねェだろ」
ほぼ恒例と化している2人の無限ループ口喧嘩が始まった。 「飽きないのか」の前に「よく言葉が続くな」といった勢いの怒涛の口喧嘩、 そりゃもう部外者の人にはあんまり聞かれたくない内容っていうかワケ分からない内容ではあるが。
キル「少し、声、抑えたほう、良いぞ」
キルリアが何かを感知したのか警告を軽く出すも、当の2人はお互いに知ったこっちゃ無ェ状態。
醍「疑惑事態がテメェの思い込みなんだがな、まだ分かンねェか。 オマエにシスコン疑惑って方がよっぽど信憑性ありそうだぞ」
駿斗「――貴様にだけは言われたくは無いわ!」
ガッ
反論を言った直後、駿斗が声を張り上げ掴み掛かってきた。 体格差もあり大した影響は無いが、それでも駿斗は掴み掛かったまま睨み上げてくる。
その姿に何故か昔の自分が重なる。 酷く ――苛々する。
醍「ヒトの事好き勝手言っておきながら、いざテメェが言われりゃ力で黙らせようとする…か。 ――だからお前はガキなんだよッ!」
キル「ダイ、スルト。 ココで大声、危険。 来るぞ、毒虫とか、沢山?」
もう、止まらない。 大声が堰を切って出て、拳が駿斗の胸倉を掴む。 それでも言い争いは止まらない。
キル「――ケイ、これ、止まる?」
圭「…無理だよ、今の兄さん本気で怒りそうな気持ちを必死に抑えてる顔してる」
キルのシステム的な問い掛けと圭の困惑した答えが小さく聞こえる。 だが、そんな事は最早どうでもいい。
「実力行使、でも無理そう……? 毒針、投擲。」
――待て、今なんつった?
意識をそちらに向けた瞬間キルリアの毒蠍が毒針を射出していた。
とすっ。
十数分後、掴み合いは拳飛び交う殴り合いへ発展していた。 毒とかもうマジでアウトオブ眼中の二人。
駿斗「それが開き直りってんですよ! あんたは違う違う喚いて終わりだから信用なんねぇんだよ。 紗夜の事想ってる様子も全然伝わってこねえ。 そんなんに紗夜は渡さねぇ! 持ち上げて叩き落されりゃ余計に痛てぇだろが。 どんだけアイツが苦しむ事になると思ってやがる」
醍「じゃあお前がシスコンじゃねえ事証明しろ、っつったら 何するよ?」
駿斗「相手が納得するまで時間かけて説得するね! 少なくとも絶叫でかきまわしゃしねぇわ」
醍「その相手が色眼鏡全開で聞く耳すら持たねぇなら?」 会えねェ事に毎日毎日メソメソメソメソしてウサギみてぇに野垂れ死んでる方が伝わるか? お好みか? テメェの我侭も大概にしとけよ」
口喧嘩しながらも互いの手は止まる事無く繰り出され続ける。 片や速度と精度を伴った拳、片や重量を伴った拳。 互いの拳がギリギリの所で避け避けられ掠り掠られ弾き弾かれ。 こう拮抗状態が続くのであれば、残る要素は純粋な体力のみ。
駿斗の息が次第に切れ始め、俺は未だ疲れを感じない。 こんな勝負で勝っても、相手を黙らせても、意味が無い上に何の解決にもなりゃしねェ。 ……だが、それでも今この勝負だけは退けない理由がある。
醍「それに何だ、俺が紗夜を捨てることが前提みてえな事口走ってンじゃねえ ……幾らテメェでも口走っていいセリフじゃねェよ…!!」
駿斗「兎は寂しくても死なねぇよ。寧ろあいつ等はしぶとさ、繁殖のシンボルだッツーの 極端すぎんだよバカ教師!」
ドムッ…!
続け様に何かを叫ぼうとした駿斗の胸部を、重い拳が捉えた。 そのまま打ち出す様に振り抜き砂地へ叩きつけられる。 何とか起き上がろうとするも咳が止まらないらしく仰向けに倒れたままだ。
話にもなりゃしねェ、と互いの平行線な意思の状態を面倒臭さ満点に含んだ愚痴を吐き 俺は駿斗に背を向けた。
醍「あン? どうしたよ、大声出し過ぎて喉でも痛めたのか」
何分経っただろうか。 背後にいる人物は喉を押さえたまま突っ伏したまま殆ど動いた気配がしなかった。 幾ら向こうが近接戦闘が不得手だとはいえ…流石にこれは何かがおかしい。
駿斗「……トドメ」
何かを言い掛けて再び咳き込みながら、駿斗が胸に爪を立てて起き上がってくる。 顔色は悪く、その姿にいつも程の生気は見られなかった。
醍「…阿呆かオマエは、トドメなんか刺さなきゃならねぇ理由がどっかに転がってる様にでも見えたのか?」
駿斗「意見があわねぇから命がけで拳で語ろうってんじゃねぇんで?」
何を言おうとしていたのか理解するのに多少時間が掛かったが、 理解すると同時に溜息が思わず出た。 駿斗の目は相変わらず虚ろなまま、余り頭が回っているとは思えない。 反応を聞き再び、一際大きな溜息が出される。
醍「それこそ暴行魔の一行加えるだけだろ。 重要なのは『納得』なんだよ、どんな結果だろうと納得出来りゃどうってことねえ」
こんな方法でどちらが勝ちかなど決めた所で意味が無い…どころか納得も出来ない。 どちらも納得出来ないのであれば、これから先何度も何度も繰り返されるだけだ。 ンなモン、メンドクセェ以外の何者でもありゃしねえ。
――それよりも、何よりも。
醍「…それと、ガキが命を賭けるとかヌかすな。 生きてやる覚悟もねェのかお前はよ」
駿斗「うっせぇ……」
まだ何か言い足りないらしく駿斗がこちらを見やる。 その瞳には先程よりは生気が戻ってきていた。 こっちはとりあえず良し、か。
醍「とりあえず喋ンな、後で幾らでも聞いてやるよ。 生憎俺は生き抜くつもりしかねえ。 それに…向こうもお出ましな様子だしな、少しでも休めておけ、死ぬ気もねェんだろ?」
流石にキルリアの警告を無視し過ぎたか、振り返ればすぐそばまで敵の群れは迫っていた。 甲殻を持った蚯蚓が1、2、3匹、そしてそれらに守られる様に毒百足が1匹。 少しばかりコイツは厄いが…
まあテメェのツケぐらいテメェでどうにかしねェと、な。
駿斗の状態が回復するのを脇に見て、金槌を握り締め一歩敵前へ踏み出した。
圭「守りたいものは同じなんだろうに、ね…」 一部始終を見ていた少女は少し寂しそうな目をして、小さく呟いた。
毒蠍『僕が狩る側だ。』 歩行仙人掌A『歴史ある針拳法、しかと味わうが良いわ。』 歩行仙人掌B『歴史ある針拳法、しかと味わうが良いわ。』
何だろうな、前に居た学園での経験や慣れが大きいのか然程違和感を感じねェ。 つーか、アレだな。 歩行雑草に比べりゃ大抵のモンが可愛いモンだよな、確かに。 あの歩行雑草のフォルムに生理的嫌悪感…むしろトラウマを持ってる奴って結構いるらしいし、 俺から見てもあの妙な筋肉っぷりが何かキモいし。 それに比べりゃコイツらは上等なモンだよなァ。
などと一人ごちている間に駿斗とキルリアは戦闘態勢を整えていた、 俺もアイツらの前に立ってやらねえとな。
醍「よっ、とォ…まずは初戦、ここで落としちゃあ後が悪リィよなア」
鉄の塊を肩に担ぎ上げ悠然と歩を進め、眼前の敵と対峙する。
戦闘、開始。
先ず始めに動いたのは駿斗、そしてキルリア。 その先制攻撃は毒蠍を完全に捕らえ作戦通り対象の行動阻害が成功、 そのまま畳み掛ける様に駿斗、キルリアと次々に攻撃を加えてゆく。
ゴンッ
そして続け様に振ったハンマーに鈍い音と確かな手応えが走る。
醍「オラ邪魔だ、転がってンなら端寄ってやがれ」
一機撃墜、オーヴァ。 そんな感じで歩行仙人掌Bを端へ蹴り飛ばしていると、横から毒蠍が飛び掛ってきた。
毒蠍「大人しくしろ。」
醍「大人しく出来るかァッ!!」
思わず口走った隙に一発食らってしまった、思ったよりキくなァコイツは……。 しかも毒は毒でも麻痺毒まで持ってやがったのかよコイツ。 そう舌打ちしながら思考していると、ふと、何か違和感がある事に気付く。 先程まで全く気付いていなかったコト。
―――おァ、防具外したまんまで半裸じゃねェか俺。
って、痛って、痛えじゃねェかよこっち麻痺毒まだ残ってて動けねェンだっつの、 来ンな殴ンなトゲ出すなっつーかうっぜェなオイ?!
勿論声には出ない、麻痺してるから。 式村醍、リミットブレイクまであと僅か。
麻痺から解放された頃には戦闘がほぼ終わっていたのは言うまでも無い。 リミットブレイク、不発。
圭「兄さん、何で防具外してたの?」
戦闘が終わると後方へ退避していた圭が戻ってくるなり疑問の声を上げる。 尤もな疑問だが。
醍「特に意味は無ぇ、っつーか凡ミス?」
圭「はあ…次からは気をつけてね、やっぱり鍛え直さないと危ないみたいだし、ここ」
醍「応よ」
ったく、ここンところ妙にツイてねェ。 防具外れだとか以前の脱衣向上委員会所属だとかの所為で半裸とか裸族とか言われンのはまだ良いとして。
何故に女タラシだとかロリコンだとか疑惑吹っかけられなきゃならねェんだ… 何かとそういうのと縁があるのは否定しねえケド、ンな真似した事無えっての。
……つーか、俺そこまで信用無ェのかな、真剣なハナシ。
一夜明け整った通路を進んでいくと、魔方陣が描かれた広い区画に出た。 魔方陣の模様は『憩いの印』、これでこの島へ来た時に見た魔法陣に続き3つ目の場所を記憶した事になる。
醍「3箇所目、っとォ。 入り口から2日ありゃ来れる場所ってのは妥当なモンなのかねェ」
圭「うーん…もっと先に進むと何日も歩きっぱなしになったりするのかなあ」
醍「じゃねェの? 流石にそこまで親切じゃあねェだろうしな」
圭「財宝とかあるって話だし、やっぱり簡単には、かぁ…」
ここまで簡単に進んで来れると逆に警戒しがちになる、暫くはその必要性も無いんだろうが… ナンだかなァ。
などと考えながら歩いていると、
駿斗「センセー」
と駿斗が前方を指差しながら口を開く、教師と生徒だった頃を思い出すトーンで。 それに釣られる様に俺も同じ調子で返す。
醍「おう何だー」
駿斗「猫2匹。YUBISASHI KAKUNIN。 あと、壁が歩いてますぜ」
指差す方向には確かに黒い猫が2匹。 そしてなまっちょろい手足が生えた壁っつーか塀っつーか、まぁ、何か歩いてやがる。 昨日の圭じゃぁ無いが確かに大分慣れてくるモンだな、こういうのは。
醍「あァ猫だな、あと壁だな。 壁は――」
握り拳から親指を上げ首へ持っていき
醍「――ブッ壊せ。」
そのまま狩る様に親指で横一閃、さァサァ処刑タイムの始まり始まり。
本日の授業:破壊工作。